残業中 携帯の声が ふんわり残る

今週のお題「575」

仕事がたて込んでいて忙しい、とは家族に伝えていたけど、夢中になって仕事をしていて、ふと気がつくと、子供達の夕食の時間になっていました。

しまった。
慌てて、パパに電話したら、出ない。

もしかして、パパも残業？
急いで、子供の携帯に電話。

すると、思ったより低い声が出ました。
「もしもし。」
「あの、えっ？次女ちゃん？」
「うん。次女ちゃんですよ。」
「えっ？次女ちゃんよね？」
すると、笑いをこらえたクールな声。
「はい。次女ちゃんですよ。」
変化の激しい声変わり、聞くたびに低くなります。

「どんな会話よ。」
パパの低い笑い声が、遠くから聞こえます。
そして、長男の高くて明るい笑い声、長女の優しい笑い声が聞こえました。

「あ、ご飯は、大丈夫そうね。」
「あ、うん。いま食べてるとこ。」
「良かった。あ、で、お母さんのもある？」
すると、少し声が遠くなります。
「お母さんの、あるよね？」
遠くから、パパの低い「うん。」の声。

「あるって。」
「そっか。ありがとう 。じゃあ、もう少し仕事をやるわ。」
「うん。頑張ってね。」
「ありがとう。」

電話を切ると、急にシンとして、そこは薄暗い、静かな職場。さっきまで賑やかだった耳元から、切り離されて、ママは独り職場に立っていました。
そして、少し寂しい、心細い気持ちになりました。

だけど、そこには、家族の暖かさが、ふんわり。まるで残り香のように、ママを取り囲んでくれているのでした。